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世界を読み解くコラム

  • 社会情報学部
  • エネルギーについて、考えよう
  • 石田 博之 教授
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私たちの生活を支えるエネルギーとは?

私たちが日常的に良く使う「エネルギー」という言葉は、実際には何を意味するのでしょうか?この言葉は、物理学的に言うと「仕事をする力」であり、経済学的に言えば「仕事をする能力を有する財」を意味します。ものを動かしたり、熱を出したり、光をつくったりするためには、すべてエネルギーが必要です。そのエネルギーを生み出すもととなるエネルギー資源には石炭、原油、天然ガスなどの化石燃料や、原子力また太陽や風、水、地熱といった、自然から直接得られるもの(これを「一次エネルギー」とも呼ぶ)があります。

 

そしてこれらを変換したり加工したりしてつくられる電気、ガソリン、都市ガスなどの二次エネルギーを使って、私たちの便利な生活は成り立っています。一国の経済活動や国民の豊かな生活には、この両方のエネルギーの安定的な供給が必要不可欠ですが、資源のない日本はエネルギー資源の多くを輸入に頼らざるを得ません。そのためこれまで世界や日本の経済、社会情勢、外部環境などさまざまなことを考慮しつつ、利用するエネルギーの選択を行ってきました。

 

かつての私たちの生活を思い返してみましょう。ひと昔前は、家庭で使う暖房器具といえば石油ストーブやガスファンヒーターなどが多かったと思いますが、いま都会で石油ストーブを使う家庭は少ないと思います。エアコンや床暖房など、その多くが電気を利用しています。利便性や環境性(換気が不要など)に優れている電気が、それまでの灯油などの石油製品や都市ガスに取って代わったのです。このように電気は、私たちの生活になくてはならないものとなりました。そして莫大な量の電気を生み出すために、発電所で使われるエネルギー資源も、石油から天然ガスや原子力へと比重が変わってきたのです。

「脱石油」から始まった、エネルギー資源の原子力シフト

ではなぜ石油から原子力などへのエネルギーシフトが起きたのでしょうか。

 

その端緒は、1970年代に起きたオイルショックに遡ることができます。当時、日本の電力生産の80%は石油に依存していたため、石油に替わるエネルギーの開発が急務となる中で、政府は原子力と天然ガスと再生可能エネルギーへのシフトに力を入れていきました。しかし太陽光に代表される再生可能エネルギーは、一気に普及させられるほど設備のコストダウンが叶いませんでした。一方天然ガスは、日本が島国であるため産出国から船で運ばなければならず、気体の天然ガスを冷却して液体にし、体積を1/600にまで減らして運ぶなど、それなりの設備や技術のための巨額の投資を必要としました。その後90年代に入ると、地球温暖化という環境問題も考慮しなければならなくなり、エネルギーを使いながら、かつCO2も抑制しなければいけないということで、当時の判断として、少ないウラン資源で大量の電気を作る原子力に一定の役割を期待するようになっていったという流れがあります。

 

また90年代には、世界的な規制緩和の流れを受けて、経営の効率化が課題となりました。日本はほかの先進国と比べて電気料金が高く、それが企業の生産コストを引き上げる一因となっているのではないか……といった懸念から、競争原理を導入して電気をもっと効率的につくることが、エネルギー政策の重要な目的のひとつとなっていきました。

 

こうした流れを受けて、原子力発電の導入が進みます。とはいえ、電気を生むための燃料投入に占める原子力の割合は、2011年3月に東日本大震災が起きる前の2010年度の時点では3割弱と、石炭、天然ガスで3等分する状態でした。その結果、日本は世界第3位の原発保有国となりました。残りは水力他と石油で、石油は一番少ないときで1割を切っており、電力生産における「脱石油」の目的は果たされていたと言えます。

次世代を担う、有望なエネルギー源は?

2011年3月に起きた東日本大震災によって、原子力発電所の持つ危うさが露呈することとなりました。これを受けて、代替となるエネルギー源は何が有望なのかと、多くの人が関心を持ち、そして再生可能エネルギーの促進を期待されたのではないかと思います。

 

また「原発稼働がゼロになっても大規模停電が起きていないから、このまま原発をなくしても良いのでは」と思っている方もいると思いますが、その分いまは火力発電に頼っている状態なので、現在日本は、地球温暖化に配慮したエネルギー使用ができていない状況にあります。

 

次世代のエネルギー資源に求められるのは、海外の政情に関係なくエネルギー資源が安定してもたらされる「エネルギーの安全保障の確保」、「経済効率性の高さ」「環境への適合」に加えて、災害時などの不測の事態に対する「安全・安心」がなくてはなりません。

 

では、現在期待されている再生可能エネルギーは、これらの条件をクリアすることができるのか、みてみましょう。

 

再生可能エネルギーは、太陽光や風力などの自然がエネルギー源ですから「エネルギーの安全保障の確保」と「環境への適合」「安全・安心」は◎ですが、下の表にあるように、1,000㎡あたりどれだけエネルギーをつくることができるのかという「エネルギー密度」をほかのエネルギーと比較すると、圧倒的に密度が低く、希薄なのが分かります。原子力発電所1基と同じだけの電気をつくろうとした場合、風力であれば、山手線の円内の3倍くらいの土地がないと、それだけの電気を生むことはできないと言われています。日本は島国なので、風力発電の施設を陸上に設置する場所がとても少ないのです。

また発電コストに大きく関係する指標である「設備利用率」も、再生可能エネルギーでは低く、太陽光発電では12~14%、風力でも20%程度しかありません。どんな発電設備でも定期点検などがあるので、利用率が100%になることはありませんが、火力発電所の70%に比較すると、どれだけ太陽光や風力の設備利用率が低いかがわかると思います。また、気象条件や風況に左右されるなど、24時間安定的に発電できない。つまり再生可能エネルギーは「経済効率性」や「出力の安定性」において、クリアしなければならない課題をいくつも抱えていると言うことができるでしょう。

こうした状況を勘案すると、再生可能エネルギーはさらなる技術の発展がないかぎり、夢のエネルギーにはなりえません。「エネルギーの安全保障の確保」と「経済効率性の高さ」「環境への適合」「安全・安心」を担保できるエネルギーを見つけるまでは、さまざまなエネルギーを使うことでリスクを分散させるしか、現在の生活を維持する方法はないのです。

 

しかしそのエネルギー使用のバランスに関しては、政府だけが推し進めればいいというのではなく、国民一人ひとりが真剣に考え、選択する時代となっているのではないでしょうか。

 

私たちは1日の内にどれだけのエネルギーを使っているのでしょう。朝起きて、さまざまな家電製品を使って出かける準備をし、さらに電車や車を使って移動し、建物に入ればエスカレーターやエレベーター、空調や照明を利用する。また、食べているもの、着ている服も製造や輸送、販売など、私たちの手元に届くまでにたくさんのエネルギーが消費されています。しかし、私たちはエネルギーを消費しているという感覚のないまま、生活のすべてを成り立たせてしまっているのです。こうした生活について関心を持ち、一度じっくり考えてみる必要があるのではないでしょうか。

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社会情報学部

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  • 石田 博之 教授
  • 所属:青山学院大学 社会情報学部 社会情報学科
    担当科目:データ分析(第一部)、合理的思考と社会行動(第一部)、データ分析演習(第一部)、計量経済学(第一部)、ゼミナールⅠ(第一部)、ゼミナールⅡ(第一部)、環境エネルギー経済特論(大学院)、環境エネルギー情報特論(大学院)、エネルギー経済論(第一部)、国際エネルギー論(第一部)、社会情報学特論(大学院)、卒業研究(第一部)、特定課題演習/研究(第一部)
    専門分野及び関連分野:エネルギー経済, エネルギー安全保障, 地球温暖化問題
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